ウイスキーは、その深い味わいと香りで多くの人々を魅了してきました。しかし、ウイスキーにはさまざまな種類や特徴があり、初心者にはどれを選べばいいのか迷ってしまうことも。
この記事では、ウイスキーの種類やその違いを、産地や使用される材料の観点からわかりやすく解説します。ウイスキーの世界への第一歩を、ともに踏み出しましょう。
はじめに:ウイスキーってどう作るの?
そもそも、ウイスキーはどのように作られているか知っていますか?
ウイスキーは大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を麦芽の酵素で糖化し、これをアルコール発酵させ蒸留したものです。
ウイスキーは産地や種類によって使用する材料が違いますが、主に以下の7つの製造工程を経て作られます。
- 製麦(モルティング)
- 糖化(マッシング)
- 発酵(ファーメンテーション)
- 蒸留(ディスティレーション)
- 熟成(マチュレーション)
- 調合(ブレンディング/ヴァッティング)
- 瓶詰め(ボトリング)
製麦(モルティング)
製麦の過程では、大麦を水に浸して発芽させます。その後、発芽を止めるために乾燥させて粉砕します。
大麦のままだと発酵に時間がかかるため、製麦(モルティング)することで次工程の糖化(マッシング)を行いやすくします。
材料にトウモロコシを使用する場合は、発芽は行わず粉砕することで次工程に進みます。
糖化(マッシング)
粉砕した大麦やトウモロコシを温かい水と混ぜ合わせます。この工程で酵素が大麦やトウモロコシに含まれるデンプン質を糖分に変えて甘い麦汁(ウォート)ができあがります。
糖化(マッシング)で使用する水の品質はウイスキーの味に影響します。水は基本的に蒸留所の近くの水を使うため、産地がどこなのかというのはウイスキーの品質に影響します。
麦汁(ウォート)には麦の殻などが含まれるため、最後にろ過して次工程に進みます。
発酵(ファーメンテーション)
発酵(ファーメンテーション)とは、麦汁の成分を微生物の力でアルコールと炭酸ガスに分解することです。
発酵は約2~3日にわたって行われ、最終的にアルコール度数7%~10%の発酵液(もろみ)ができあがります。
蒸留(ディスティレーション)
アルコールと水の蒸発温度は違うため、低い温度で発酵液(もろみ)のアルコール分だけを蒸発させて、蒸発で生まれた気体を冷却して液体にすることでアルコール度数の高い蒸留酒を生成します。
このとき、蒸留には2種類の蒸留器が利用されます。それは、ポットスチル(単式蒸留器)と連続式蒸留器です。一般的に、大麦を使用した場合には主にポットスチル(単式蒸留器)が、トウモロコシを使用した場合には主に連続式蒸留器が利用されます。
熟成(マチュレーション)
蒸留酒を木製の樽で長期間熟成することによって、ウイスキーの独特な琥珀色とまろやかな味わいは生み出されます。
この熟成期間は、一般的に10年以上となります。この間、樽の木材からバニリンやタンニンといった香り成分、さらにはポリフェノールや色素成分がウイスキーに溶出します。実際、ウイスキーの風味の大部分はこの熟成過程によって形成されると言われています。
熟成に使用する樽の種類や熟成期間によって、ウイスキーの味は違ってきます。
調合(ブレンディング/ヴァッティング)
熟成を終えた樽の中のウイスキー原酒は、それぞれ仕上がりが異なります。品質を一定にするために、複数の樽の原酒を混ぜ合わせます。
この時、大麦で作った原酒同士を混ぜ合わせることをヴァッティング、大麦で作った原酒とそれ以外の材料で作った原酒を混ぜ合わせることをブレンディングと言います。
品質の良いウイスキーができるかは、ブレンダーというウイスキー職人の腕が影響する重要な工程です。
7.瓶詰め(ボトリング)
最後に、ウイスキー内の不純物を取り除き、加水してアルコール濃度を調整して瓶に詰めて出荷します。
産地による違い:世界5大ウイスキー
スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本の5カ国は、世界的なウイスキー生産地として知られており、これらの国で作られたウイスキーは「5大ウイスキー」と呼ばれています。これらの国では、それぞれ独自の風土に合わせた製法を発展させ、個性的なウイスキーを生み出し、世界中のウイスキーファンを魅了し続けています。
スコッチウイスキー
スコッチウイスキーは、スコットランドで製造されるウイスキーのことをいいます。
最大の特徴はピート香と呼ばれるスモーキーな香りにあります。製造工程において使用されたピート特有のスモーキーな香りがウイスキーに移ることで、独特の香りがウイスキーに付与されるのです。
また、スコッチウイスキーの定義ははスコットランドの法律で以下のように決められています。
- スコットランドで製造されていること。
- 原料は大麦麦芽などの穀物、水、酵母のみを使用すること。
- アルコール度数94.8度以下で蒸留すること。
- 容量700L以下のオーク樽で、3年以上熟成すること。
- 瓶詰時のアルコール度数は40度以上であること。
- 添加物は水とカラメルのみであること。
アイリッシュウイスキー
アイリッシュウイスキーとは、アイルランドで生産されているウイスキーのことを言います。ウイスキーの代名詞といわれるスコッチウイスキーと、どちらが起源なのかと争うほどの歴史を持ちます。
アイリッシュウイスキーでは通常、スコッチウイスキーのようにピートを使いません。そのため、どちらかというと雑味がなくて、材料本来のクリアな味わいのものが多いのが特徴です
また、アイリッシュウイスキーの定義は法律で以下のように決められています。
- アイルランド島(アイルランド共和国、または英国領北アイルランド)の倉庫で3年以上熟成させること穀物類を原料とすること
- 穀物を原料とすること
- 麦芽に含まれる酵素により糖化し、酵母の働きによって発酵させていること
- 蒸溜時のアルコール度数は94.8%以下であること
- 木製樽に詰めること
アメリカンウイスキー
アメリカンウイスキーとは、アメリカ国内で造られているウイスキーの総称です。
アメリカンウイスキーは連邦アルコール法という法律で種類が分けられており、バーボンウイスキーやコーンウイスキー、ライモルトウイスキーなどそれぞれ定義があります。
アメリカンウイスキーには以下のような種類があります。
- バーボンウイスキー:トウモロコシが最低51%以上
- コーンウイスキー:トウモロコシが80%以上
- モルトウイスキー:大麦(大麦麦芽)が51%以上
- ライウイスキー:ライ麦が51%以上
- ウィートウイスキー:小麦が51%以上
カナディアンウイスキー
カナディアンウイスキーとはカナダで作られるウイスキーの総称です。
カナディアンウイスキーは、トウモロコシなどを材料にしたウイスキーと、大麦やライ麦などの麦類を材料にしたウイスキーをブレンドして造る「ブレンデッドウイスキー」がほとんどで、5大ウイスキーの中で最も飲みやすい口当たりが特徴です。
カナディアンウイスキーの定義は法律で以下のように決められています。
- 穀物を材料に、麦芽などで糖化、酵母などで発酵させること
- 700リットル以下の木樽で3年以上熟成させること
- アルコール度数40%以上で瓶詰めすること
- 糖化・蒸溜・熟成はカナダ国内で行うこと
- カラメルまたはフレーバリングを添加してもよい
ジャパニーズウイスキー
ジャパニーズウイスキーとは日本で作られるウイスキーのことをいいます。
スコッチウイスキーを手本としつつ、日本人の舌にあわせて独自の進化を進めてきました。他の5大ウイスキーと比べて繊細で複雑な香り・味わいが特徴です。
ジャパニーズウイスキーには以下のような品質定義があります。
- 原材料は麦芽、穀類を必ず使用し、日本国内で採取された水を使用すること
- 原酒を700リットル以下の木樽につめ、日本国内で三年以上貯蔵すること
- 日本国内で瓶詰めすること
材料による違い:モルトウイスキーやグレーンウイスキー
モルトウイスキー
モルトウイスキーとは大麦を材料にして作られるウイスキーのことです。その中でも、1つの蒸留所のみで作られたものをシングルモルトウイスキーと言います。
日本では大麦100%と定義されていますが、アメリカでは大麦が51%以上使われていればモルトウイスキーと名乗れます。大麦100%のウイスキーはピュアモルトウイスキーとも呼ばれます。
シングルモルトウイスキーの特徴は蒸留所によって大きく違っています。
グレーンウイスキー
グレーンウイスキーは大麦以外にトウモロコシやライ麦、小麦などの別の穀類を使用したウイスキーのことをいいます。トウモロコシが多いと口当たりがまろやかに、ライ麦が多いとドライな味わいが強くなると言われています。
モルトウイスキーと比較すると、香りが弱い傾向にあるため、モルトウイスキーと混ぜあわせたブレンデッドウイスキーとして販売されることが多いです。
ブレンデッドウイスキー
モルトウイスキーとグレーンウイスキーを混ぜ合わせたウイスキーのことをいいます。
混ぜ合わせることを専門にする「ブレンダー」の腕によって味が変わることが特徴です。
熟成方法による違い:樽の種類による味の違い
ウイスキーを熟成させる樽には、樽に使用した木材による違いと樽に入っていた液体による違いがあります。
樽の材質による違い
ウイスキーを熟成させる樽の材質には、基本的にオーク木材が使われます。ただ、オーク木材にも種類があり、ウイスキーの熟成に使われるのは以下の4種類です
- アメリカンホワイトオーク:バニラやはちみつ、カラメルなどのような甘い味をウイスキーに与える
- コモンオーク:ドライフルーツのようなフルーティな香りをウイスキーに与える
- セシルオーク:タンニンが豊富に含まれており、スパイシーな香りをウイスキーに与える
- ミズナラ:日本に多く自生しており、高級感のある線香のような香りをウイスキーに与えます。
樽に入っていた液体による違い
スコッチウイスキーやジャパニーズウイスキーなどでは、新しい樽ではなく過去にウイスキー以外の液体が入っていた樽を使用することが多いです。反面、アメリカンウイスキーやカナディアンウイスキーは新しい樽を使うことが多いです。
中に入っていた液体によってウイスキーの味に与える影響が変わり、以下のような種類があります。
- バーボン樽:薄くて金色っぽい色になり、バニラのような味わいをウイスキーに与える
- シェリー樽:シェリー酒由来のドライフルーツのような甘みをウイスキーに与える
- ワイン樽:ワイン由来の酸味やぶどうの香りをウイスキーに与える
- ポート樽:ポートワイン由来の濃厚な甘みをウイスキーに与える
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